第一章 仮想法廷一 木曽義仲軍乱暴狼藉事件

 

概要 

 

 京都で木曽義仲軍のみが乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)を働いたとする通説(俗説)は平家物語の捏造(ねつぞう、作り話)であり誤りである。
 乱暴狼藉の真犯人は元平家軍将兵(後の鎌倉軍将兵)、僧兵、一般市民である。

 

「木曽義仲軍乱暴狼藉事件」

 

一  開廷 検察官論告

被告  義仲軍残党(木曽次郎義仲以下将兵代理)
証人 平家物語原作者
証人 平家物語編集者
証人 琵琶法師(びわほうし)
証人  九条兼実(くじょうかねざね)「玉葉(ぎょくよう)」著者
証人 慈円(じえん)「愚管抄(ぐかんしょう)」著者
証人 藤原経房(ふじはらつねふさ)「吉記(きっき)」著者 
証人 中山忠親(なかやまただちか)「山槐記(さんかいき)」著者 
証人 藤原定家(ふじはらていか)「明月記(めいげつき)」著者 
証人 鎌倉「吾妻鏡(あずまかがみ)」編集者 
証人 京都市民 
証人 山(比叡山延暦寺、ひえいざんえんりゃくじ)寺(三井寺、園城寺)僧
証人 平家軍残党
証人 鎌倉軍武将(梶原景時、かじわらかげとき)
証人 鎌倉軍武将(渋谷重助、しぶやしげすけ)
証人 物盗り
証人 農民

 

裁判長 「ただいまより、寿永二年七月京都進攻後における八月九月中の木曽

    義仲軍の乱暴狼藉事件について審理を開始する。検察官は罪名(ざい

    めい)と罰条(ばつじょう)を述べて下さい」

検察官「罪名、京都市内において公卿(くぎょう)及び仏寺、神社、市民に対す

    る乱暴狼藉および乱暴狼藉の取り締まりの命令違反及び職務怠慢(たい

    まん)」
    「罰条、位階剥奪(はくだつ)、官職停止、京都追放」

裁判長 「被告人は、罪名を認めますか」
被告(義仲軍残党)「認めない。木曽義仲軍は信濃の木曽及びその他の信濃の

    農民兵を主体とする軍であり、今までほぼ連戦連勝であるが、敵地を

    占領しても乱暴狼藉をした事は無い。今回の入京軍には北陸の兵、美

    濃(みの)、尾張()おわり、近江(おうみ)の将兵が加わっているが、市

    民等に対し乱暴狼藉をしたことは無い。叉市内の物盗り、夜盗、平家

    の残党、山僧(比叡山延暦寺の僧兵)等による乱暴狼藉の取り締まりも

    法皇の命令に従い、各軍が分担して忠実に実行した。木曽義仲軍のみ

    の乱暴狼藉というのは平家物語や、その解説者の捏造(ねつぞう、作

    り話)である」

裁判長 「被告人は、乱暴狼藉の真犯人は誰だと思いますか」
被告(義仲軍残党)「乱暴狼藉の真犯人は元平家軍将兵(後の鎌倉軍将兵)、

    僧兵、一般市民であると思います」
          
二  平家物語作者等の証言

 

検察官 「証人、平家物語原作者に質問します。木曽義仲軍の乱暴狼藉は事実

    ですか」
証人(平家物語原作者)「なるべく事実に忠実に書いたつもりです。木曽義仲

    軍の市民に対する乱暴狼藉の事実は無い。書いた覚えも無い。乱暴狼

    藉の真犯人は元平家軍将兵(後の鎌倉軍将兵)、僧兵、一般市民である

    。これを琵琶法師(びわほうし)や後世の編集者が改変したようです」

 

弁護人 「証人、平家物語原作者に質問します。平家軍は京都から退却する時

    、六波羅(ろくはら)の屋敷を焼き払いましたか」
証人(平家物語原作者)「はい、その通りです」

 

弁護人 「証人に質問します。何故、平家軍は六波羅を焼き払ったと思いま

    すか」
証人(平家物語原作者)「家屋敷や食料・武器などを敵の木曽義仲軍に利用さ

    せないためです。退却する時の常識です」

 

弁護人 「証人、平家物語原作者と慈円のに質問します。慈円の「愚管抄」に

    よると、六波羅を焼き払った時、京都中の物盗りが集まり、乱れ入り

    、物盗りしたとなっています。事実ですか」
証人(慈円「愚管抄」著者)「はい、その通りです」
証人(平家物語原作者)「はい、その通りです」

 

弁護人 「証人に質問します。慈円の「愚管抄」によると、法皇以下公卿の多

    くが比叡山(ひえいざん)に退避していた時、京都市内では、たがいに

     追捕(ついぶ、略奪)をしたようですが、事実ですか」
証人(慈円「愚管抄」著者)「はい、その通り事実です」
証人(平家物語原作者)「はい、その通り事実です」

 

弁護人 「証人に質問します。この場合のたがいとは誰と誰のことですか」
証人(平家物語原作者)「京都市民どうし、あるいは平家軍と市民です」

 

弁護人 「証人、平家軍と市民がたがいに追捕(ついぶ、略奪)とはどういうこ

    とですか」
証人(平家物語原作者)「平家軍が市民から追捕(ついぶ、略奪)しながら退

    却し、、また逆に市民が落ち行く平家軍から略奪しました」

 

検察官 「証人、平家物語編集者に質問します。木曽義仲軍の乱暴狼藉は事実

    ですか」
証人(平家物語編集者)「木曽義仲軍の乱暴狼藉の事実は無い。乱暴狼藉の真

    犯人は元平家軍将兵(後の鎌倉軍将兵)、僧兵、一般市民です」

 

検察官 「証人、平家物語編集者に質問します。何故、原作を改編しましたか」
証人(平家物語編集者)「事実を書いた原作物語では、琵琶法師が語る時、こ

    れを聞く一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十三  判決

 

裁判長 「判決を言い渡す。

 

     主文、木曽義仲及び木曽義仲軍は無罪。

 

     判決理由、


     平家物語の木曽軍の乱暴狼藉の記述は事実ではなく捏造(ねつぞう、

    作り話)である。
     乱暴狼藉の真犯人は元平家軍将兵(後の鎌倉軍将兵)、僧兵、一般市

    民である。
     九条兼実の玉葉の木曽軍の乱暴狼藉の記述は正体不明のある人の風聞

    が多く信用出来ない。
     慈円の愚管抄は木曽軍の乱暴狼藉を記述せず、木曽軍以外の乱暴狼藉

    を記述しており信用出来る。
     市民などから見ると乱暴と思われる追捕(ついぶ、略奪)も当時は官

    軍としての食糧調達の ための合法的軍事活動の一部の行為であり、平

    家軍、鎌倉軍も同様に追捕をしていた。

                            以上」

 

長福寺(長野県木曽町福島) 巴の長刀があるという。
長福寺(長野県木曽町福島) 巴の長刀があるという。
光輪寺(長野県朝日村) 境内に薬師堂がある。
光輪寺(長野県朝日村) 境内に薬師堂がある。
光輪寺薬師堂(長野県朝日村) 義仲の位牌、桜があるという。
光輪寺薬師堂(長野県朝日村) 義仲の位牌、桜があるという。
東漸寺(長野県塩尻市) 長瀬判官ゆかりという。
東漸寺(長野県塩尻市) 長瀬判官ゆかりという。
今井神社(長野県松本市) 今井兼平の館跡という。
今井神社(長野県松本市) 今井兼平の館跡という。